BACK TO BASIC

研修を終え、現場に復帰してからの1ヶ月。

前にも増してパン作りに熱が入ります。

仕事終わりにその日作ったパンを振り返り、配合や作業工程について考える。

気がついたことをまとめたノートも、もうすぐ一冊書き終わります。


いつしか、僕にとってパンは楽しく食べるものではなくなり、批評の対象になっていきました。


今日も朝からひたすらパンを焼く。

黙々と生地を捏ね上げ、発酵させ、形を作って、焼く。

そうやって一日の仕事がピークを越え、一息ついていた夕方。

「ねぇ。ちょっと。」

厨房の外から声をかけられる。

見知らぬ女性が立っている。


「わたし、いつもここのパン買うのよ」


お店の袋を掲げる女性。


「このベリーが入ったパンと、それからライ麦のパン?これ本当に美味しいわね。」


笑顔で語る女性。

僕は突然のことにうまく対応できず、ありがとうございます、と言うのが精一杯だった。


「本当に美味しいよ。」


立ち尽くす僕に一言そう言い残して、女性は去って行った。



パンを作る側からすれば、少しでも美味しいパンを作りたいと思うのは当たり前のことで、そのために日々研鑽を積むのも当たり前のこと。

技術を磨いて、知識を身につけて、出来上がったパンを評価する。

味が薄いとか皮が厚いとか、パサついてるとか見た目が惜しいとか、パンを分析する。

それはやっぱり必要で、これからも欠かさず続けていく。

でも、パンを食べる側、お客さんからすれば、パンは単に食べ物で、日々の暮らしを少しだけ豊かにしてくれる、そんなものなんじゃないか。

理屈をこねまわしてばかりで、一番基本的なことを忘れちゃったら、それは何だかおかしい。


パンは食べるもの。

そして楽しむもの。

それを忘れないように。


お客さんが何を求めてるのか、それをわかろうとしないでパンを作るのは間違ってる。


今日、あのお客さんがわざわざ厨房に寄って話してくれたこと。

しっかり心に留めておく。

この記事へのコメント

2012年09月03日 00:57
「ねえ!ちょっと!」なんて、厨房の外から、誉められるなんて、めったに聞いた事ありません。ホントに良かった。
2012年09月05日 11:27
そうですね、びっくりしました。これからはちょくちょく売場を覗いて、お客さんの反応をチェックしたいなと思います。